大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和33(オ)142 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人梨木作次郎の上告理由第一点について。

所論は被上告人においてDを診断するにあたり問診並びに看護指導を怠り医師と

しての注意義務に違背した過失があるというにある。

しかしながら、原審は挙示の証拠により、俗にいう疫痢とは消化不良症状を伴う

赤痢の特定型をいうものであつて、疫痢症状を認定するには通常(一)脳症状を現

わす嗜眠性脳膜炎を生じ更に進んで昏睡状態になりその間しばしば全身痙攣が起き

ること(二)循環器障害例えば心臓脈に強く異状が認められること(三)胃腸症状

すなわち嘔吐下痢があり大便中に膿汁、粘液、血液が発見されることの三つの条件

があつて、普通一般に大便中に膿汁、粘液、血液を発見することができ得れば赤痢

症状という認定ができるけれども、(一)、(二)の条件を充足しない限り疫痢と

認定することができず、少くとも疫痢を疑う症状を認定するには大便中に膿汁、粘

液、血液を発見されなければならないと判示した上、昭和二九年五月二八日午后二

時頃被上告人が診察した時に患者Dにおいて嘔吐、下痢のあつたこと、発熱三九度

五分あつて扁桃腺が赤く腫れていたこと、被上告人は疫痢を疑う症状の有無を認識

するため浣腸を施し検便の結果黄色軟便で不消化物が混つていたが、粘液、膿汁、

血液が発見されずまた脳症状も現われていなかつたことを認定した上、Dは右診察

の際に疫痢を疑う段階になかつたものというべく、被上告人が扁桃腺炎及び消化不

良症と診断したことに過失があつたということはできないし、従つて被上告人にお

いて右Dの症状が事後疫痢に急変する予想のもとに、同日Dの附添人Eに対し看護

上特別の指導を与えなかつたことに過失は認められないと判示しているのであつて、

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右判断は相当である。�

また、被上告人が昭和二九年五月二八日右Dを診察するに際し所論の既往症につ

いて問診をしなかつたことは原判示にあきらかであるが、原判決は挙示の証拠によ

り、昭和二七年七月頃の右Dの症状は検便の結果粘液便はあつたが赤痢菌の検出が

なく疫痢と診断し得なかつたことが認められるので、被上告人が問診によつて右既

往症を知りこれを比較することができたとしても、昭和二九年五月二八日の診察に

おいて疫痢の疑をもち得たかどうか、又事后の症状の急変悪化を予見し得たかどう

かは直ちに結論を出し難く、右Dの既往症に関する問診を怠つたとの一事をもつて

右Dの死亡に因果関係を有する過失とすることはできない旨判断しているのであつ

て、右は正当として是認することができる。所論は、原判決の認定しない事実にも

とづき独自の見解を主張して原審の適法な判断を非難するものであつて、採用する

を得ない。

同第二点について。

所論は原判決が、被上告人が前示五月二八日Dを診察する際に、所論同人の体質

年令等について考慮を払わなかつたと認めるに足る資料はないと判示した点につい

て、これと異る事実にもとづき原判決の適法な証拠判断を非難し或は原審と異る独

自の見解にもとづいて原判決の適法な判断を攻撃するものであつて、採用するを得

ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

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裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

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